借りている建物から出ていきたいと考えています。どうすればよいでしょうか?

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建物を有償で貸し借りする契約を建物賃貸借契約と呼び、貸す人を賃貸人、借りる人を賃借人と呼びます。賃借人は、借りた建物に居住したり、店舗や事務所として使用したりするわけですが、いつかは建物から出ていくときがきます。あらかじめ賃貸期間が定められており、その期間満了時に退去する場合は問題ありません。では、賃貸期間が定められていない場合はどのような手続を踏めば退去できるのでしょうか?また、賃貸期間が定められている場合に、その賃貸期間が満了するよりも前に退去したい場合、そのようなことは可能なのでしょうか?本稿では、建物の賃借人が建物から退去する手続について解説します。

 

概要

賃借人が建物から退去しようとする場合、賃貸人の債務不履行(例:建物に問題があるのに賃貸人が修繕対応してくれない等)が原因となって退去する場合と、賃借人側の事情(例:引っ越したいとか、店舗を閉店したい等)が原因となって退去する場合があり、それぞれ退去するための要件が異なります。また、賃貸期間の定めがある場合とない場合でも、退去するための要件が異なります。

賃貸期間の定めがある賃貸借の場合、原則として、賃借人は期間満了まで借り続けなければならず、期間中に中途終了させることはできません。ただし、賃貸人が債務不履行をした場合は、賃借人は賃貸借契約を解除して退去することができます。賃貸人に債務不履行がない場合は中途終了は困難ですが、賃貸借契約中途解約を認める条項がある場合に限り、その条項に基づき中途解約して退去することができます。

賃貸期間の定めがない賃貸借の場合、賃借人はいつでも賃貸人に対して解約を申し入れることができ、賃貸借契約解約申入から3か月が経過すると終了し、退去することができます。また、賃貸人が債務不履行をした場合は、賃借人は3か月間の経過を待たずに賃貸借契約を解除して退去することができます。

上記を分類すると、下記のようになります。

賃貸人の債務不履行による退去 賃借人側の事情による退去
賃貸期間の定めがある場合 1:賃貸借契約を解除して退去する 2:中途解約条項に基づき解約して退去する
賃貸期間の定めがない場合 3:賃貸借契約を解除して退去する 4:解約申入れをして(原則として)3か月経過後に退去する

以下、各場合についてもう少し詳しく解説します。

 

債務不履行解除(上記1番と3番)

賃貸人が、賃貸借契約に定められた義務に違反した場合、賃借人は賃貸借契約を解除することができます。例えば、建物の一部が破損して建物を十分に使用することができないため、賃貸人に対して建物修繕請求書を交付して修繕を請求したにもかかわらず、賃貸人が修繕しようとしない場合などがこれに該当します。このような場合、賃借人は賃貸人に対して建物賃貸借契約解除通知書を交付して債務の履行を催告し、一定期間(義務違反を是正するために合理的に必要な期間)が経過してもなお履行されない場合に、賃貸借契約を解除できます。ただし、もし賃貸借契約書に一定の事由が生じた場合は賃借人は催告せずに解除できる旨の条項(無催告解除特約)が規定されている場合は、賃借人は催告せずに建物賃貸借契約解除通知書の交付によって直ちに賃貸借契約を解除することができます。

 

中途解約条項(上記2番)

期間の定めがある賃貸借であっても、賃貸借契約書の中に一定の条件を満たせば賃借人からの中途解約を認める旨の条項(中途解約条項)が規定されている場合があります。例えば、「〇か月前までに賃貸人に通知するか、又は〇か月分の賃料を支払う」ことを条件に、賃借人による中途解約を認めるような条項が、これに該当します。この場合、賃貸期間の途中であっても、条件を満たせば、賃貸人に対して建物賃貸借契約解約通知書を交付することで賃貸借契約を解約して退去することが可能となります。中途解約条項がない場合は、上記の債務不履行解除の場合を除き、賃借人から賃貸借契約を終了させることはできません。例えば、2年間の期間の定めのある賃貸借契約において、1年が経過した時点で賃借人から中途解約しようとしても認められず、賃借人は残りの1年分の賃料を支払わなければなりません(ただし、残存期間が長期間である場合は賃借人に過大な負担を負わせるものとして残存期間全部の賃料請求は認められない場合もあります)。

 

期間の定めのない賃貸借における解約申入れ(上記4番)

期間の定めがない賃貸借契約の場合は、賃借人はいつでも解約申入れをすることができ、建物賃貸借解約通知書の交付から3か月後に賃貸借契約は終了します。解約申入れの理由は何でも構いませんので、なんとなく引っ越したくなったというだけでも問題ありません。ただし、3か月間という期間は民法に定められた原則ですので、賃貸借契約によって短縮又は延長することが可能です。よって、賃貸借契約に解約申入れから1か月後に解約とする旨や、解約申入れから6か月後に解約とする旨の条項が規定されている場合、そのような条項は有効なので、賃貸借契約はその条項に従って解約申入れから1か月後又は6か月後に終了します。

 

結論

賃借人側から賃貸借契約を終了させて退去する場合は、賃貸人の同意を得て契約終了させる場合を除けば、上記の分類に従って賃貸借契約を解除又は解約する必要があります。賃貸借契約の終了について争いが生じないよう、解除の場合は建物賃貸借契約解除通知書を、解約の場合は建物賃貸借契約解約通知書を、それぞれ作成して、賃貸人に対して配達証明付き内容証明郵便で郵送するか、又は直接交付して受領の署名をもらう等、書面で証拠を残しておくことが重要です。

 

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