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競業避止義務契約書

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競業避止義務契約とは何ですか?

競業避止義務契約は、企業間で競業行為を行わない旨を約束する契約です。競業行為とは、ある事業者と競業する事業を営んだり、ある事業者の競業相手の利益となる行為をすることです。競業行為を行ってはらならない義務を「競業避止義務」といいます。

競業避止義務は、企業間で営業上・技術上の秘密やノウハウの開示が行われる際に、開示を受ける者に対して負わせる義務であり、具体的には下記の義務が含まれます。

  • 開示を受けた情報を利用して自ら開示者と同一類似の事業を営んではならない
  • 開示を受けた情報を知った状態で開示者の競業相手の従業員や役員に就任してはならない
  • 開示を受けた情報を開示者の競業相手に提供してはならない。
  • 開示を受けた情報を、開示者の競業相手の利益となるように利用してはならない
  • 開示者の役員・従業員を引き抜くよう働きかけてはならない
  • 開示者の顧客に対する営業活動を行ってはならない

 

競業避止義務契約は、秘密保持契約とどう違いますか?

競業避止義務契約と秘密保持契約は、いずれも企業間で営業上・技術上の秘密情報を開示する際に利用される契約です。

秘密保持契約は、情報開示を受けた者に対して、その情報を第三者に流出させることをを禁止する契約です。秘密保持契約は、秘密情報を開示する以上、原則として常に締結すべき契約といえます。

競業避止義務契約は、情報開示を受けた者に対して、その情報を利用して情報開示者と競合する行為を行うことを禁止する契約です。情報開示を受けた当事者は、その情報を第三者に流出させなくても、自らその情報を利用して情報開示者と競業する事業を行うことができます。これを避けるためには、秘密保持義務に加えて競業避止義務も負わせる必要があります。競業避止義務は、一定期間にわたり当事者の営業活動を制約することになるので、秘密保持義務よりも重い義務であるといえます。そのため、秘密情報の開示を行う場合でも、競業避止義務まで負わせるかどうかは、開示する情報の性質や当事者間の関係性などを考慮して事案ごとに判断する必要があります。

 

競業避止義務契約書と競業避止義務誓約書はどう違いますか?

形式的な違いは、競業避止義務契約書は両当事者が署名する契約書であるのに対して、競業避止義務誓約書一方当事者のみが署名して他方当事者に差し入れる誓約書であるという点です。両当事者が相互に競業避止義務を負う場合は競業避止義務契約書とする必要がありますが、一方当事者のみが競業避止義務を負う場合は、いずれの形式でも問題ありません。

ただし実務上は、企業間で競業避止義務を負わせるときは競業避止義務契約書を使用することが一般的であり、従業員や役員に会社に対する競業避止義務を負わせるときは競業避止義務誓約書を使用することが一般的です。

 

競業避止義務契約書は必ず作成しなければなりませんか?

いいえ、口頭で競業避止を合意しただけでも、競業避止義務は発生し得ます。しかし、合意があったかどうか、あったとしてもどの範囲の情報についてどれくらいの期間競業避止義務を負うのか、といった点が明確でないと、いざ競業行為を行ったときに責任追及をすることが極めて難しくなります。よって、実務的には、口頭で競業避止の合意をしても実効性がないため、契約書という形で作成する必要があります。

 

競業避止義務契約において禁止されている事項はありますか?

競業避止義務は、義務者の営業の自由を強く制限する義務であるため、契約書に定める競業避止義務の範囲は、合理的範囲に限定する必要があります。

契約書に定めた競業避止義務の範囲が広すぎる場合、公序良俗違反として契約が無効と判断されたり、独占禁止法に違反すると判断されたりすることがあります。独占禁止法違反とは、例えば、事業者Aが、ある市場の占有率が特に高い事業者Bに対して競業避止義務を課すと、事業者Aの競合他社は事業者Bと取引することができなくなり、他の取引先を探そうとしても事業者B以外の事業者はなかなか見つからないという状況になることがあります。このようなケースは、私的独占として独占禁止法違反と認定される可能性があります。

よって、競業避止義務の期間や地域的範囲を合理的範囲に限定する等して過度の義務とならないように調整する必要があります。また、競業避止義務の範囲を広めに設定する場合は、義務を課す側から義務を負う側に対して金銭交付などの代償措置を講じることが必要になります。

 

競業避止義務の期間はどれくらにすれば良いですか?

上限期間や下限期間が法定されているわけではありませんので、適切な期間は事案に応じて異なります。

例えば、競業避止義務を負う者が個人フリーランサーである場合は、あまり長期間の競業避止義務を負わされると収入を得ることが困難になるため、長くても1年程度とするケースが多いです。それ以外の場合でも、通常は2~3年程度に設定することが多く、これを超えると契約の有効性に疑義が生じます。

他方、事業譲渡をした者が負う競業避止義務は原則20年と法定されているため、事業譲渡の場合は20年という期間を設定しても問題は生じにくいでしょう。

 

競業避止義務契約はどのように締結すればよいですか?

競業避止義務契約書は、2部プリントアウトして両当事者が署名押印し、各自1部ずつ保管してください。プリントアウトした書面が複数枚にわたる場合は、書面の連続性を示すために各見開きごとに(製本する場合は製本部分に)割印をするようにしてください。

競業避止義務契約書は、プリントアウトせずに、電子契約サービスを利用して締結することもできます。

競業避止義務契約は、締結するタイミングが重要です。秘密情報を開示した後に競業避止義務契約を締結しようとしても、秘密情報の開示を受けた側はもはや締結に応じてくれないかもしれません。よって、競業避止義務契約は、原則として秘密情報を相手方に開示する前に締結する必要があります。


競業避止義務契約書には印紙税がかかりますか?

競業避止義務契約書は、印紙税の課税対象となりませんので、印紙税の支払は不要です。

 

競業避止義務はいつ終了しますか?

競業避止義務は、原則として契約で定めた期間が満了するまで継続します。ただし、契約で定めた期間が過度に長期である場合は、合理的期間を経過した後に競業行為をしても、競業避止義務違反と認定されない場合があります。

また、競業避止義務を課す側の当事者が、義務を負う側の当事者に対して、競業避止義務を負う代償として金銭交付をする等の代償措置を定めた場合に、この代償措置の履行を怠った場合は、競業避止義務を負う側の当事者は債務不履行に基づき競業避止義務を解除することができます。

 

競業避止義務契約書に記載しなければならない事項は何ですか?

  • 競業避止義務:競業避止義務は義務者の営業活動を強く制限する義務であるため、無暗に課すことはできません。よって契約書には、当事者間のどのような関係に基づき競業避止義務を負わせる必要があるのかという前提を記載する必要があります。
  • 地理的範囲:競業避止義務を負わせる地理的範囲を合理的範囲に限定する必要があります。例えば、情報開示者が特定の地域のみを商圏として営業している場合は、その商圏の外で競業行為が行われても情報開示者に不利益はありません。競業避止義務の範囲を広げすぎると義務自体の有効性に疑義が生じますので、競業を禁止する必要がある地理的範囲をよく考えて記入してください。
  • 期間:競業避止義務を負わせる期間も限定する必要があります。長すぎる期間を設定すると義務の有効性に疑義が生じますので、合理的に必要といえる期間に限定してください。
  • 代償措置:競業避止義務の有効性を判断する際、代償措置の有無が考慮されます。競業避止義務の地理的範囲や期間が大きめに設定されたとしても、競業避止義務を負わせる側から負う側に対して金銭支払等の代償措置が講じられた場合は、競業避止義務が有効と判断される可能性が高まります。

 

競業避止義務契約に適用される法律は何ですか?

一般的な契約のルールは民法に、市場に悪影響を与える競業避止義務に対する制限は独占禁止法に、それぞれ規定されています。また、会社法には代理商や事業譲渡人が負う競業避止義務が規定されています。

 

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